この記事では、注文住宅の諸費用の相場について解説します。
注文住宅を購入する際にかかる費用は、土地代や建物代だけではありません。土地・建物の取得に関連する手続きや住宅ローンの契約において、さまざまな諸費用がかかります。
結論として、注文住宅にかかる諸費用の相場は建築費用の10%前後が目安です。
この記事では、注文住宅にかかる諸費用の内訳を項目別に解説します。また、注文住宅の諸費用を抑えるコツを解説し、実際の費用をシミュレーションします。
注文住宅の諸費用の相場や内訳が気になる人は、ぜひ最後までお読みください。
【この記事でわかること】 ・注文住宅にかかる諸費用の相場は建築費用の10%前後が目安 ・【項目別】注文住宅にかかる諸費用の内訳 ・注文住宅の諸費用を抑えるコツ ・注文住宅にかかる諸費用を実際にシミュレーション |
注文住宅にかかる諸費用の相場は建築費用の10%前後が目安
そもそも注文住宅を建てる際には、大きく分けて以下の3つの費用がかかります。
- 土地取得にかかる費用
- 建物購入にかかる費用
- 諸費用
諸費用には、住宅ローンに関連する手数料や火災保険、不動産登記に関連する費用のほか、引っ越し費用などの住宅ローンに組み込めない費用が含まれます。
一般的に、諸費用は建築費用の約10%前後です。例えば、建築総額が3,000万円の場合、諸費用は300万円かかると判断できます。
【項目別】注文住宅にかかる諸費用の内訳
ここでは、注文住宅にかかる諸費用の内訳を項目別に解説していきます。
- 土地購入にかかる諸費用の内訳
- 建物の建築にかかる諸費用の内訳
- 住宅ローンの契約にかかる諸費用の内訳
- その他の諸費用一覧
上記4つについて順番に見ていきましょう。
土地購入にかかる諸費用の内訳
土地購入にかかる諸費用の内訳は、主に以下の通りです。
項目 | 費用相場 | 詳細 |
登記費用 | 25〜40万円 | 土地の所有権を登録するための費用 |
測量費 | 10〜30万円 | 土地の境界を正確に測定するための費用 |
仲介手数料 | 不動産価格の3%+6万円程度 | 土地を購入する際に不動産会社へ支払う手数料 |
不動産取得税 | 固定資産税評価額×3% | 不動産を取得した際に発生する税金 |
固定資産税 | 固定資産税評価額×1.4% | 不動産を所有している人や法人に課される税金 |
※参考1:不動産取得税|税金の種類|東京都主税局
※参考2:都税:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|都税Q&A|東京都主税局
登記費用は、不動産の所有権を明確にするために行う”登記”にかかる費用です。主に、所有権移転登記、抵当権設定登記、および所有権保存登記の3種類があります。
測量費は、土地の境界を明確にするために発生する費用です。具体的な費用は、土地の大きさや地形、測量の難易度によって変動します。測量により、土地の正確な面積や境界線が確定し、将来の近隣トラブルを防げます。
仲介手数料は、不動産会社が取引の仲介を行った際に発生する費用です。仲介手数料は、物件の売買契約成立時に支払われることが多く、物件の価格やサービス内容によって差が生じます。
不動産取得税は、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得したときに課税される税金です。通常は固定資産税評価額の4%ですが、宅地・住宅の場合は軽減税率3%が適用されます。
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人や法人に課される税金です。固定資産税額は、居住地域や購入時期、建物の大きさなどによって異なります。
建物の建築にかかる諸費用の内訳
建物の建築にかかる諸費用の内訳は、主に以下の通りです。
項目 | 費用相場 | 詳細 |
建築確認申請費 | 数万円 | 建築計画が法律に適合しているかを申請する費用 |
地盤改良費 | 数十〜数百万円 | 土地の地盤を安定させるための工事費用 |
ライフラインの引込工事費用 | 40〜60万円 | 水道管やガス管などを引き込む費用 |
地鎮祭・上棟式の費用 | 5万円 | 建築を始める前の地鎮祭、骨組み完成時の上棟式にかかる費用 |
建築確認申請費は、建築物を建設する際に必要な許可を得るために支払う費用です。建築確認のために、行政機関に対して建物の設計図面や計画書類を提出する必要があります。
地盤改良費は、建物を建設するために土地の地盤を安定させるために支払う費用です。地盤改良は、地震や地盤沈下などのリスクを軽減し、建物の安全性を確保するために行われます。
ライフラインの引込工事費用は、建物にガスや水道、通信などのライフラインを引き込むために支払う費用です。
地鎮祭・上棟式の費用は、建物の建設に関連した儀式を行う際に支払う費用です。地鎮祭は安全な工事を祈願する儀式で、上棟式は建物の骨組みが完成した際に行われ、工事の成功と安全を祈願する儀式です。
住宅ローンの契約にかかる諸費用の内訳
住宅ローンの契約にかかる諸費用の内訳は、主に以下の通りです。
項目 | 費用相場 | 詳細 |
事務手数料 | 2〜4万円 | ローン契約を結ぶ際に金融機関が取る手数料 |
保証料 | 借入額の1〜2% | ローンを保証するために支払う費用 |
火災・地震保険料 | 数万円程度 | 住宅が火災・地震などのリスクに備えるための保険料 |
団体信用生命保険料 | 一般的にローン金利に含まれる | 住宅ローン利用者が死亡や高度障害の状態になるリスクに備える保険料 |
住宅ローンの事務手数料は、金融機関が住宅ローンの借入手続きにかかる事務費用として融資を受ける人が支払う費用です。手数料は金融機関によって異なります。一般的に、事務手数料は定率型と定額型があり、定率型では融資額の2.2%が相場である一方、定額型では3万円〜5万円前後の範囲が一般的です。
保証料は、住宅ローン利用者が返済不能になった場合に保証会社が一時的に返済を肩代わりするために支払う費用です。保証料の支払い方法には一括前払いと金利上乗せの2種類があります。一括前払いでは、ローン契約時に保証料全額を一度に支払います。金利上乗せでは、ローンの金利に上乗せして保証料を支払います。
火災保険料・地震保険料は、住宅ローンを利用して購入する住宅が火災・地震などで損害を受けた際に補償されるための保険料です。火災保険は、住宅ローン契約の条件として加入が求められることが一般的であり、保険料は物件の立地や構造などによって異なります。
団体信用生命保険とは、住宅ローン利用者が死亡や高度障害の状態になった場合、住宅ローンの残高が支払われる保険です。利用者に万が一のことがあったときでも、家族は住宅ローンの返済を負担する必要がなく、住宅に住み続けられます。
その他の諸費用一覧
注文住宅に関するその他の諸費用は、主に以下の通りです。
項目 | 費用相場 | 詳細 |
引っ越し費用 | 15〜20万円 | 新居への引っ越しにかかる費用 |
家具・家電購入費 | 30〜100万円 | 新居に合わせて新しい家具や家電を購入するための費用 |
引っ越し費用は、現在の住所から新しい住所へ移動する際に発生する費用です。荷物の量や移動距離、オプションの有無によって変動します。
家具・家電購入費は、新居で必要となる家具や家電を購入するための費用です。新しい生活空間に合わせた家具や、買い替えが必要な家電製品の購入にかかる総費用を指します。
注文住宅の諸費用を抑えるコツ
ここでは、注文住宅の諸費用を抑える4つのコツを解説します。
- 保険料・保証料などを見直す
- ビルダーが所有する土地を購入する
- 利用できる補助金制度を確認する
- 引っ越し時期は繁忙期を避ける
順番に見ていきましょう。
保険料・保証料などを見直す
保険料・保証料に過不足がないか確認することが重要です。
注文住宅を購入する際は、火災保険や地震保険など、さまざまな保険に加入します。建物や住宅ローンに関連したもので、将来的なリスクをカバーするために必要です。
しかし、より多くのリスクに対応しようとすると、費用は大きく膨らみます。どのリスクにどれだけ対応できるようにすべきかを見極めることで、費用を節約できます。自分にとって必要な保険内容を選択し、不要な保険料をなるべく支払わないようにしましょう。
ビルダーが所有する土地を購入する
土地の購入には高額な費用がかかりますが、ビルダーがすでに所有している土地を購入することで、費用を抑えられる場合があります。
ビルダーが一括で土地と建物の提案を行うため、土地探しにかかる時間や労力、費用を大幅に削減できます。土地購入の際の中間マージンが省けるため、全体的なコストを下げられることが大きなメリットです。
ただし、ビルダーから購入できる土地の選択肢は限られるため、事前に希望する地域や条件を明確にしておくことが重要です。
利用できる補助金制度を確認する
国や自治体では、エコ住宅の推進や子育て世帯の支援など、さまざまな補助金制度を設けています。補助金制度を利用することで、建設費や諸費用の一部を補助してもらうことが可能です。
国から得られる補助金の例として、以下が挙げられます。
- 子育てエコホーム支援事業
- ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業
- 地域型住宅グリーン化事業
- LCCM住宅整備推進事業
※2024年3月現在
事前にどのような制度があるのかを調べ、適用条件を満たしているかを確認することが重要です。
引っ越し時期は繁忙期を避ける
諸費用を抑えるために、引っ越し時期は繁忙期を避けることをおすすめします。
引っ越し業者は、需要が高まる繁忙期に料金を上げることが一般的です。特に、新学期や新年度の始まりにあたる3月や4月は、引っ越し需要がピークに達します。
引っ越しを行う人が多い時期を避けることで、引っ越し費用を節約できる可能性があります。
注文住宅にかかる諸費用を実際にシミュレーション
ここでは、注文住宅にかかる諸費用を実際にシミュレーションします。主な条件は、以下の通りです。
【条件】 ・土地代:2,000万円(固定資産税評価額は1,400万円) ・建物:3,000万円(固定資産税評価額は1,800万円) ・頭金:500万円 ・住宅ローン借入額:4,500万円 |
上記の条件において、諸費用の内訳をシミュレーションすると以下の通りです。
分類 | 項目 | 計算方法 | 費用目安 |
土地購入 | 登記費用 | – | 30万円 |
土地購入 | 測量費 | – | 20万円 |
土地購入 | 仲介手数料 | 土地価格の3%+6万円程度 | 66万円 |
土地購入 | 不動産取得税 | 固定資産税評価額×3% | 42万円 |
土地購入 | 固定資産税 | 固定資産税評価額×1.4% | 19.6万円 |
建物の建築 | 建築確認申請費 | – | 3万円 |
建物の建築 | 地盤改良費 | – | 100万円 |
建物の建築 | ライフラインの引込工事費用 | – | 50万円 |
建物の建築 | 地鎮祭・上棟式の費用 | – | 5万円 |
住宅ローン契約 | 事務手数料 | – | 3万円 |
住宅ローンの契約 | 保証料 | 借入額の1.5% | 67.5万円 |
住宅ローンの契約 | 火災・地震保険料 | – | 2万円 |
住宅ローンの契約 | 団体信用生命保険料 | ローン金利に含まれる | 0円 |
その他 | 引っ越し費用 | – | 20万円 |
その他 | 家具・家電購入費 | – | 50万円 |
‐ | 合計 | ‐ | 478.1万円 |
上記の条件で5,000万円の土地付注文住宅を購入した場合、諸費用は約478万円となることがわかりました。つまり、住宅購入にかかる総費用の10%程度が諸費用の目安といえます。
注文住宅の諸費用に関するよくある質問
ここでは、注文住宅の諸費用に関するよくある質問に回答します。
- 注文住宅の総費用は一般公開されている?
- 注文住宅の諸費用が払えないとどうなる?
- 注文住宅の諸費用をローンに組み込むことは可能?
疑問の解消にお役立てください。
注文住宅の総費用は一般公開されている?
注文住宅の総費用は、建築する地域や家の仕様・設備によって大きく異なるため、一概に公開されているわけではありません。
ビルダーに相談すると、大まかな見積もりや過去の事例を参考にした費用の相場を提示してくれるでしょう。
注文住宅の諸費用が払えないとどうなる?
注文住宅の諸費用が払えなくなった場合、最悪のケースとしては契約違反となり、家の建築が中断されるおそれがあります。最悪の事態を避けるためには、建築前に現実的な費用計画を立て、予算内で収まるように計画を進めることが必要です。
また、金融機関と相談し、予期せぬ出費に対応できるようにローンの余裕を持たせることも1つの方法です。事前に諸費用を把握し、計画的に資金を管理することが重要です。
注文住宅の諸費用をローンに組み込むことは可能?
注文住宅の諸費用には、ローンに組み込める項目と組み込めない項目があります。組み込める主な項目は以下の通りです。
- 登記費用
- 仲介手数料
- 建築確認申請費用
- 地盤改良費
- 事務手数料
- 保証料
また、組み込めない項目は以下の通りです。
- 不動産取得税
- 固定資産税
- 引っ越し費用
- 家具・家電購入費
諸費用をローンに組み込むことで、初期の出費が抑えられて負担が軽減されます。
ただし、ローンに組み込む諸費用の範囲や条件は金融機関によって異なるため、具体的な内容は事前に確認することが必要です。
また、諸費用をローンに組み込むことで、総返済額が増加することにも注意が必要です。
注文住宅の諸費用は余裕のある資金計画が重要
注文住宅の諸費用は、総費用の10%程度が目安です。住宅ローンに組み込めず現金で用意することが必要な項目もあるため、資金計画を立てる際は余裕を持たせることも重要です。
諸費用を含めて、余裕を持った資金計画を立てる際は、金融機関やビルダーなどの専門家に相談することをおすすめします。過去の事例や豊富な知識を基に、それぞれの住宅購入者に合った資金計画を提案してくれることが期待できます。