この記事では、頭金なしでも住宅ローンは組めるのか、その方法について解説します。
結論、頭金なしでも住宅ローンを組むことは可能です。頭金なしで住宅ローンを組む人も一定の割合存在します。しかし、頭金なしで組むと、返済負担が重くなったり審査に通りにくくなったりします。
この記事では、頭金なしで住宅ローンを組むデメリットやメリット、後悔しないためのポイントも解説します。頭金を用意する余裕がない人や、どのくらい頭金を用意すればよいのかわからない人はぜひ最後までお読みください。
そもそも住宅ローンにおける頭金とは?
そもそも頭金とは、住宅を購入する際に最初に支払う金額のことです。頭金を用意することで住宅ローンの借入額が減少し、返済負担が軽減されるのがメリットです。
- 頭金の平均額
- 頭金なしの割合
順番に見ていきましょう。
頭金の平均額
ここでは、『令和4年度 住宅市場動向調査報告書』を基に、これまで住宅を購入した人が用意した頭金の平均額について解説していきます。
全国の土地購入世帯の住宅建築資金と土地購入資金の合計に占める、自己資金の金額と割合は以下の通りです。
平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | |
自己資金 | 1,237万円 | 1,254万円 | 1,197万円 | 1,203万円 | 1,665万円 |
購入資金総額 | 3,971万円 | 4,615万円 | 4,606万円 | 5,112万円 | 5,436万円 |
自己資金比率 | 31.2% | 27.2% | 26.0% | 23.5% | 30.6% |
上記の通り、用意する自己資金の平均額は令和3年度まで1,200万円前後でしたが、令和4年度は1,665万円まで急上昇しました。
また、該当する期間の自己資金比率は20〜30%程度です。頭金は、購入資金総額の30%前後を目安とするとよいでしょう。
頭金なしの割合
ここでは、『2023年首都圏新築マンション契約者動向調査』を基に、首都圏で新築マンションを契約した人が用意した頭金について解説します。
自己資金比率の分布は以下の通りです。
自己資金比率 | 0% | 5%未満 | 5〜10%未満 | 10〜15%未満 | 15〜20%未満 | 20%以上 |
契約者全体に占める割合 | 17.7% | 24.0% | 12.2% | 7.9% | 5.6% | 4.1% |
※出典:2023年首都圏新築マンション契約者動向調査|SUUMOリサーチセンター
上記の通り、自己資金を用意せずに新築マンションを購入した人の割合は17.7%です。5%未満の人の割合も合わせると、41.7%の人が自己資金をほとんど用意していなかったことがわかります。
頭金なしでも住宅ローンは組めるのか
前述の通り、頭金なしでも住宅ローンを組むことは可能です。頭金を用意することが難しい場合でも、住宅を購入するためのローンを利用できる金融機関は増えています。
頭金なしで住宅ローンを組むことで、初期費用を抑えてすぐに住宅を購入できるメリットがあります。しかし一般的に、頭金なしで住宅ローンを組むことはおすすめできません。
以下では、頭金なしがおすすめできない理由を解説していきます。
頭金なしがおすすめできない理由
頭金なしで住宅ローンを組むことがおすすめできない理由は、以下の3つが挙げられます。
- 金利上昇が起こったときの負担増加が大きい
- 金融機関の選択肢が減る
- 将来の資金計画に影響する
- ライフプランの見直しが必要になる
頭金を用意しなければ、借入額は大きくなります。また、変動金利で住宅ローンを契約すれば、金利見直しのタイミングで金利が上昇するリスクがあります。頭金がないと、借入額が大きい分、金利上昇時の返済負担の増加も大きくなるでしょう。
頭金なしでローンを組む場合、対応してくれる金融機関が限られることがあります。頭金を用意せずとも住宅ローンを組める金融機関は増えていますが、依然として多くの金融機関は頭金を一定額以上支払うことを条件にしています。そのため、選べるローンの種類や条件が制限されるでしょう。
頭金なしのローンは毎月の返済額が高くなるため、子供の教育費やリフォーム費用、その他の貯蓄や投資に回せる資金が減少すると考えられます。
場合によっては、全体的なライフプランを見直す必要もあるでしょう。
頭金なしで住宅ローンを組むデメリット
ここでは、頭金なしで住宅ローンを組む4つのデメリットを詳しく解説します。
- 借入金利が高くなるおそれがある
- 返済総額・月々の返済額が高い
- 住宅ローン審査が通りにくい
- 担保割れするリスクが高い
疑問の解消にお役立てください。
借入金利が高くなるおそれがある
頭金なしで住宅ローンを組むと、借入金利が高くなるおそれがあります。
頭金がない場合、金融機関は融資のリスクが高いと判断するため、金利を上げることがあります。例えば、物件価格の90%以上を借り入れる場合、金融機関はリスクを軽減するための対策として、金利を高く設定するでしょう。
借入金利が高くなることで返済負担が大きくなるのは、頭金を用意しないデメリットといえます。
返済総額・月々の返済額が高い
頭金なしで住宅ローンを組むと、借入額=購入資金となるため、総返済額および毎月の返済額が高くなる点がデメリットです。
例えば、3,000万円の住宅を購入する場合、頭金を支払わないと全額を借入れすることになります。金利も発生するため総返済額が大幅に増加し、毎月の返済額も高額になるでしょう。
毎月の家計の負担が大きくなると、収入の変動や予期せぬ支出があった場合に返済困難に陥るリスクが高まります。
住宅ローン審査が通りにくい
頭金なしで住宅ローンを申し込む場合、審査が厳しくなることが一般的です。
金融機関は頭金がないと融資リスクが高まると判断し、審査基準を厳しく設定します。具体的には、収入の安定性や返済能力がより厳しくチェックされ、年収に対する返済負担率が低くなければ審査に通過しにくくなるでしょう。
担保割れするリスクが高い
頭金なしで住宅を購入すると担保割れのリスクが高まる点もデメリットです。
担保割れとは、住宅ローンの残高が住宅の市場価値・売却額を上回る状態のことを指します。例えば、住宅の市場価値が購入価格よりも大きく下がった場合、売却時にローン残高を全額返済できないおそれがあるでしょう。
担保割れのリスクは、特に不動産市場が下落した場合や、住宅の価値が時間とともに減少する地域で購入する場合に顕著になります。担保割れが発生すると、住宅を売却する際に追加の費用を負担する必要があり、経済的な負担も大きくなるといえます。
頭金なしで住宅ローンを組むメリット
ここでは、頭金なしで住宅ローンを組むことのメリットを3つ解説します。
- 自己資金が減らない
- 住宅ローン控除の恩恵が大きい
- ローン返済を早く始められる
順番に見ていきましょう。
自己資金が減らない
頭金なしで住宅ローンを組むメリットの1つは、自己資金を手元に残せることです。
頭金を支払わないことで、貯蓄が減少せず、他の出費に備えられます。例えば家を購入したら引っ越し費用や家具・家電の購入費用が必要になります。
さらに、予期せぬ医療費や教育資金などの突発的な支出が発生するケースも少なくありません。急な支出に対応するためにも、手元に現金を残しておくことは重要です。
住宅ローン控除の恩恵が大きい
頭金なしで住宅ローンを組む場合、借入額が大きくなるため、住宅ローン控除の恩恵が大きくなります。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合に、一定の条件を満たせば毎年の所得税から控除を受けられる制度です。控除額はローン残高に基づいて計算されるため、借入額が大きいほど控除額も大きくなります。
節税効果が高まり、手元に残るお金が増える可能性があります。
ローン返済を早く始められる
頭金を貯めるために購入を先延ばしにする必要がないため、早期にローン返済を開始できます。完済までの期間が前倒しできれば、定年退職して所得が減少した後もローン返済する必要はなくなるでしょう。
また、早くにローンの支払いを終え、持ち家としての安心感を得られます。
頭金なしの住宅ローンで後悔しないためのポイント
ここでは、頭金なしの住宅ローンで後悔しないための3つのポイントについて解説します。
- 住宅購入に必要な諸費用を把握する
- 今後の生活で必要になる金額を想定する
- 返済シミュレーションを行う
順番に見ていきましょう。
住宅購入に必要な諸費用を把握する
頭金なしで住宅ローンを組む場合、住宅購入に関連する諸費用をしっかりと把握することが重要です。住宅購入には、物件価格以外にも主に以下の費用がかかります。
諸費用 | 概要 |
印紙税 | 売買契約書に貼り付ける印紙代 |
不動産取得税 | 不動産を取得した際に発生する税金 |
登録免許税 | 不動産を取得した際の登記にかかる税金 |
司法書士への報酬 | 登記を司法書士に依頼する際に支払う報酬 |
仲介手数料 | 不動産会社の仲介で物件を購入した際に支払う費用 |
ローン保証料 | ローン返済を保証する保証会社に支払う費用 |
火災・地震保険料 | 購入時に掛ける保険にかかる費用 |
上記の費用を把握した上で用意する頭金の額を考えることで、購入後に資金不足に陥るリスクを減らせるでしょう。
今後の生活で必要になる金額を想定する
住宅を購入する際には、今後の生活で必要になる金額も考慮することが重要です。
例えば、子供の教育費や車の購入費用、老後の生活費などが必要になるでしょう。頭金なしで住宅ローンを組むと、手元に現金を残せる一方で、月々の返済額が高くなり、毎月貯蓄できる金額は減ります。
将来のライフプランを設計しながら、将来的な出費と貯蓄できる金額を想定し、無理のない返済計画を立てることが重要です。
返済シミュレーションを行う
頭金なしで住宅ローンを組む前に、返済シミュレーションを行うことが非常に重要です。シミュレーションを行うことで、月々の返済額や総返済額を具体的に把握できます。
また、金利変動のリスクや収入の変動を考慮して複数回シミュレーションを行うことで、将来的な返済の見通しを立てられ、無理のない返済計画を立てられるでしょう。
子育て資金や住宅のメンテナンス費など、今後の生活で必要になる金額を想定した上で返済シミュレーションを行うのもポイントです。
住宅ローンの頭金に関するよくある質問
ここでは、住宅ローンの頭金に関するよくある質問に回答します。
- 頭金と繰り上げ返済はどっちが得?
- 頭金が多ければ多いほど審査は有利になる?
- 45歳・頭金なしで住宅ローンを組むのはきつい?
疑問の解消にお役立てください。
頭金と繰り上げ返済はどっちが得?
結論として、金利が今後上がると見込まれる場合、もしくは金利が変わらないと見込まれる場合は、繰り上げ返済のほうが得になるといえます。
一般的には、手元に十分な資金があり、他に投資や貯蓄の計画がない場合は、頭金を多く支払うほうが総返済額を抑えられます。しかし、手元資金を確保したい場合や将来の金利上昇リスクを考慮すると、繰り上げ返済を計画するのも有効です。
頭金が多ければ多いほど審査は有利になる?
頭金が多ければ多いほど、住宅ローンの審査には有利に働きます。金融機関にとって、頭金の多さは借り手の返済能力や信用性を示す指標となります。
有利になる理由は以下の通りです。
- 借入額が少なくなり、返済能力が高いと判断されるから
- 金融機関のリスクが減少し、審査基準が緩和される可能性があるから
しかし、頭金が少ない場合でも、他の信用情報や収入の安定性などが十分であれば、審査に通ることも十分可能です。
45歳・頭金なしで住宅ローンを組むのはきつい?
45歳で頭金なしの住宅ローンを組むことは難しい面もありますが、不可能ではありません。
難しい理由は、年齢が高いとローンの返済期間が短くなる傾向があるからです。通常、完済時の年齢が70歳から80歳を超えないように設定されるため、返済期間が短くなり、毎月の返済額が高くなるおそれがあります。
また頭金なしの場合、借入額が大きくなるため、審査が厳しくなることがあります。
可能な対策としては、定年退職までに多めに返済することや、収入が安定していることを証明し信用力を高めることが挙げられます。また、パートナーと共同でローンを組むことで、返済能力を高められるでしょう。
45歳で頭金なしで住宅ローンを組む場合、事前にしっかりと返済計画を立て、無理のない範囲で借り入れることが重要です
頭金なしで住宅ローンを組むなら無理のない返済計画が重要
住宅ローンを頭金なしで組む場合は借入額が大きくなるため、無理のない返済計画を立てることが重要です。
頭金なしの場合は自己資金を手元に残しておけるため、引っ越し費用や家具・家電の購入費用など、住宅購入後の出費に備えられます。一方で、金利が高くなるリスクがあり、総返済額や毎月の返済額が増加する点には注意が必要です。
住宅の資金計画についてわからないことがあれば、ビルダーや金融機関などの専門家に相談することをおすすめします。豊富な実績を基に、無理のない返済計画を立てるサポートをしてくれることが期待できます。
実績や評判を確認しながら、信頼できるビルダーに相談しましょう。